オーストラリアドル各年解説(2002年の値動き)
2002年1月28日、米ドルはこれまでの上昇基調に終止符を打ち、下落を始めた。 2001年からのエンロン問題やアルゼンチンでの償却負担が米銀の業績を悪化させ、米国経済への不信が投資家に生まれたためである。さらには、FOMCは利上げを急いでいないのではという思惑や、米国貿易収支の悪化などもドル下落の要因であった。
この下落に対して上昇したのは、経済パフォーマンスが好調な高金利の通貨であった。中でもオースラリアドル(豪ドル)などが選好された。海外の投資家は、年初から豪州株を買い増す姿勢を続け、豪ドルヘの需要が旺盛となった。この意味で、豪ドルは他の主要通貨でも買われた。日本では豪ドル建ての売出債への人気が根強く、2002年前半だけでも31億豪ドルの発行があった。
しかし、年央の6月から8月始めにかけてオーストラリアドル/米ドル(AUDUSD)は反落した。グローバル経済に不安定な点が見え、さらに年初から投機筋を中心に積み上がっていたキャリー・トレード・ポジションの解消があり、利食い豪ドル売りが出たことによる。
8月からはマクファーレンRBA総裁の利下げがないことを示唆した声明を受けて、豪ドルが上昇した。さらに、10月にムーディーズは豪州政府の外債の格付けを、これまでのAa2からAaaに引き上げた。これは豪ドルにはプラス材料となった。投機家の豪ドル・ロング・ポジションは急増し、豪ドル買いに拍車がかかった。また、年後半でも日本での売出債への需要は強く、発行量はこれまでにない高い水準となった。 2002年末にはAUDUSDは0.5650を回復した。
オーストラリアドルを取り巻く為替市場の情報
東京外為市場は米ドルが対主要通貨でやや弱含んでいるものの、NY市場終盤の米ドル買いの流れが引き継がれ、ドル/円は一時80円台後半へと上値を伸ばした。しかし、米株高を受けて堅調スタートとなった日経平均株価が前日比マイナス圏へと反落したことなどを背景に、米ドル売りへと傾斜。ドル/円が緩やかに軟化し、序盤の上昇分を打ち消す一方、ユーロ/ドル及びポンド/ドルは上値を覗う展開。 ユーロはギリシャ債務問題をきっかけに先週大幅に下落したものの、8日、ノボトニー・オーストリア中銀総裁は、「理論的にも経済的にも、一部諸国のユーロ圏の離脱は考えられない」「債務諸国のユーロ圏の離脱についての憶測は、ばかばかしい」とギリシャを含む債務諸国のユーロ圏離脱を否定したことがユーロの下支えとなっている。 豪ドルは上昇。時間外取引でNY金先物が再び1500ドル台を回復しているほか、NY原油先物も反発に転じている事などが好感されている模様。明日(日本 時間10日10時30分)発表が予定されている豪州貿易収支は、前回(2月)の マイナス2.05億AUDの赤字から、今回(3月)はプラス5.00億AUD予想となっており、大幅な改善が見込まれている。